昭和をつなぐニュースメディア

世界で活躍する日本のジャズメン『増尾好秋 渡米50周年スペシャル記念日ライブ』in PIT INNを見て

『増尾好秋 渡米50周年スペシャル記念日ライブ』を見て

6月13日(日)、緊急事態宣言期限の1週間前…にしてはやけに人出の多い新宿二丁目界隈。夕刻、ジャズクラブPIT INNに到着。今宵はジャズギタリスト・増尾好秋さんの渡米50周年を記念したスペシャルライブである。そうか、あれから50年の月日が流れたのか、と誠に感慨深い。

1967年、早稲田大学在学中に、かの渡辺貞夫さんに誘われバンドの正式メンバーとなった増尾さん。とにかく格好良かった(因みに当時の渡辺貞夫バンドのドラマーは♪メアリジェ~ンでおなじみのつのだ☆ひろ)。1,970年にはジャズ雑誌「スイングジャーナル」の人気投票ギター部門で見事1位を獲得。人気絶頂の最中に、増尾さんが渡米するというので、ファンならずともびっくりのニュースであった。そんな彼を送るライブというのが、渋谷・山手教会の地下にあったジァンジァン(知る人ぞ知る小劇場)で開かれた。ファンがびっしりと客席を埋め、渡辺貞夫さんや鈴木良雄(ちんさん)などが入れ替わりステージに登場、オールナイトでライブが行われた。当時私は大学4年生で、大変な熱気がただよう客席の一隅にちんまりと存在していたのである。そしてその直後、1971年6月13日に彼は海を渡った。増尾好秋24歳の決断であった。

その後しばらく消息が途絶えたが、ニューヨークでマイケル・ブレッカーやレニー・ホワイト、エルビン・ジョーンズやリー・コニッツといった新進気鋭から大御所まで様々なミュージシャンと共演。さらにはモダンジャズの巨匠、ソニー・ロリンズのバンドのメンバーとなり、いつのまにか「世界のMASUO」として、ロリンズのバンドで日本に凱旋公演するまでになっていたのである。現在はアメリカに在住、日本に半年置きにやってきてジャズクラブを中心に演奏活動を行っている。

さて定刻の18:00に、増尾さんがいつものように帽子をかぶってにこにことステージに登場した。最初のセットは現在のレギュラーバンドMAGATAMAでの演奏であった。永武幹子というバリバリの若手ピアニスト、赤毛のドラマー・北井誉人などを擁するカルテットである。曲は全部増尾さんのオリジナル。「AG22」からスタートし、中野の新井薬師を散策中に浮かんだというまだ名前のない曲「薬師?」、そして3曲目が2009年に発表された増尾さんのアルバム 『I´m Glad There Is You』に収録されている「Part Of The Deal」。アップテンポでとてもスインギーな曲。現在74歳とは全く思えない増尾さんのソロも快調で聞きごたえたっぷり。

このあとボーカルの海老原淳子がゲストで入って、ボサノバ風の「No More Dreams」。増尾さんが亡き叔母に捧げるために作った美しいバラード「The Tree」と続き、一部のトリは「Corvallis」(オレゴン州の町の名前、奥様の故郷?)にて締め括り。

コロナ禍で公演時間が限られているため、5分もしないうちに再び登場。セカンドセットは、フロントに若い4人のホーンが加わって総勢9人でスタート。まずは「October Surprise」。女性3人、男性1人のフロントラインのユニゾンがとても心地よいファンキーなナンバー。一人一人の短いソロの受け渡しが楽しい。次いで「Wet Dog」、さらに増尾さんがソニー・ロリンズのために書いた「Sunny-Side Up」と続き、早くもエンドの曲「One Word」に。“人を愛する心を持てば、どんなことでもできる”という歌詞を、増尾さんが爽やかに歌う。ハートのこもった曲である。還暦を一回り以上過ぎた増尾さんと、増尾さんが渡米したころと同じくらいの20歳代と思われる若きミュージシャンが、入り混じってアドリブで競演する。まさにジャズならではの楽しさに満ちた記念日ライブであった。アンコールの曲もそこそこに終演時間となり、最後に全員で記念写真をパチリ。

向かって左から永武幹子(P)海老原淳子(Vo)榊原太郎(B)増尾好秋(G)北井誉人(Ds)Special horn section 芹澤朋(Ts)加納奈実(As)佐瀬悠輔(Tp)治田七海(Tb)

なお「October Surprise」と「One Word」の2曲は、多少メンバーが違うが下記のユーチューブで見られるので、興味のある方は是非ご覧いただければと思います。

『 One Word 2020 』 – YouTube

なお増尾さんは今後も各地のジャズクラブなどに出演の予定がありますので、是非一度生のステージで聞いていただきたい。増尾さんの明るいキャラクターに癒されること必定です。

増尾好秋スケジュール&News (ymasuo.com)

(「昭和のおやじ」記)